他人のフンドシ

 今年の頭のハロ紺は後に「カラオケ紺」と酷評され、今年のハロプロメンバーのコンサートにも有形無形の影響を及ぼしています。僕も合同紺やメンバーの単独紺にそういうものが入ることに対しては眉を顰める所があるのですが、メンバーが「他のメンバーの持ち歌を歌う」というコンセプト自体は素直に受け入れることができ、良い試みだと思ってました。勿論曲に対する思い入れとかは理解できるし、人後に落ちず僕にも思い入れのある曲はあるのですが、それは別にしての思いがありました。
 何で良いと思ったのか?を悪罵を目にするたびに考えてたのですが上手く収束しない。そんな時、偶々目にした記事が一つの方向性を与えてくれました。8月4日付けの日刊スポーツに載ってた記事で、サザンの「夏をあきらめて」をカバーしてヒットした研ナオコさんのインタビューなのですが、目から鱗が落ちる思いだったので、引用してみます。

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 音楽関係者との食事会で、サザンオールスターズの新作アルバムのデモテープを聴き「この曲(夏をあきらめて)を歌ってみたい!」と直感で思った。「桑田君のおしゃれな感じが曲調や歌詞に詰まっていて、湘南の景色が見えるような強烈な世界観。私なりに表現したいという闘争心がわいてきた」。
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 どんなにいい曲でも自分が理解、表現できない曲は歌えないという自称「不器用」。「待ってたんですよね、こんな曲を」。
 レコーディングは楽しくて仕方なかったという。「いい曲って、関係者やミュージシャンみんなの競争心に火をつけるパワーがあるんですよ。作り手が身を削って作った曲を受け取った以上、私も覚悟を決めて歌う」。
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 「自分の世界観で歌っている作者本人にはかなわない。でも、別のフィルターを通すことで『これも面白いんじゃない?』という世界もある」。作者から曲の説明を受ける必要は無いという。「作った方の歌声を聴けば、どういう思いで作った歌なのかが全部わかるから」。
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名曲全集

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 このインタビューを目にした時、「カヴァー」「カラオケ」の違いが少しだけ見えてきた気がします。研さんのインタビューからはその曲に対するリスペクトの念、そしてその曲を自分なりに表現したいという良い意味のむほん気、そしてやっぱり歌が好きという気持ちが鮮やかに読み取れました。
 翻ってハロプロのことを考えると、歌ったメンバーたちもそれなりに好意やリスペクトはあったのかもしれないが、それを自分なりに表現する術の欠乏や時間的制約があったために、ただの「カワイコちゃんのカラオケ」に堕す曲があり、顰蹙を買ったということがあったのかも知れません。まぁ実際コトはそんな単純では無いだろうけど。
 と同時に「カヴァー」という行為の是非は兎も角「その人ならではの世界・表現」をもっと見たいからこそ、僕はそのコンセプトを好意的に受け止めましたのでしょう。勿論一概に「演者の世界観・個性」といっても、それが伝わらなければ駄目だし、厳しい言い方をすればこっちが一見でも読み取れなければ、真の「カヴァー」とはいえないのでしょうね。
 余談ですが徳永英明さんの「カヴァー」アルバム。買おうかな?一時期「モヤモヤ病」で大変でしたが、彼が元曲をどう歌い上げてくれるのか非常に興味がありんす。

VOCALIST (初回限定盤DVD付)

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 余談終わり。
 その意味では今回の香港のライブのセットリストにおけるメンバーソロの所は自分で志願したということですから、娘。としてではなく自分自身を伝えるという点スキルアップが望め、こちらも日頃応援しているメンバーの新境地を期待でき、額面上は有意義だったと思います。勿論完全ではないでしょうから、物足りない所もあったかもしれません。そこは体験していない僕には分からないので、他人の褌で相撲を取るような言い方で一般論に留まりますが、香港でのライブの準備のために味わったものをフィードバックして次のコンサートで垣間見せてくれれば満足です。
 これは6桁払った人の特権、ご褒美?なんだろうけど、本音をいうと非常に見たい。れいにゃ「恋しちゃ!」やこんこんの恋INGは特に。くっすんの「愛あら」は怖い物見たさの割合が増しますが。愛ちゃんの「寝坊です、デートなのに」は渋い選曲。一瞬わからんかった。
 考えてみれば現メンバーで歌うLOVEマシーンなどは厳密に言うと「カヴァー」なんですよね。オリジナルメンバーいないし。それをモーニング娘。」の物として当然のように歌い、新しい物を作り上げ、また受け継いでいく。何通りもの「LOVEマシーン」がある。こちら側もそれを受け入れる。そこが「モーニング娘。」の不思議さであり、面白さなのかもしれませんね。
 蛇足。
 ハロ紺に関して。演目は今年やった(と思われる)トップダウン方式からメンバーの意志を反映した物になればもう少しマシになるのかなとちょっと思いました。今年のコンセプトを続けるにしろ、止めるにしろ・・・