真紅の女海賊 めーぐる(10)〜サイドB 第八話〜
「のわーだし汁が漏れた!!!」
「見事に決壊しましたねぇ。」
「な〜んか別の食べ物になっちゃってます、ははは」
「まー口に入っちゃえば同じだから、何事も経験経験!」
「そうですね〜」
「なはははは♪」
隣のテーブルの鉄板は阿鼻叫喚の様子を呈していた。どうやらもんじゃ焼きを作るのは初めてらしい。土手のつくりがなってない。もう少し大きく穴を開けるべきなのだ。そのうちだし汁が固まりだし、もんじゃというよりはキャベツのあんかけになっている。僕は内心小バカにしながら隣のテーブルの面子をさり気なく眺めてみる。その中の一人の顔を記憶の中に見出し反射的に顔を伏せてしまった。
あのよみうりランドでぶつかった背の高い男の人が2週間後の月島で奇声を発しながらもんじゃ相手に悪戦苦闘してる。どうしても現実感のある光景に思えずなんだか眩暈がする。
どーしてこんなところにいるのだ!暫く耳をそばだててみる。
「やー今日のイベントは良かったですね。」
「そうですね、石川さんがちゃんと美勇伝2周年にふれてくれましたもんね。後藤さんの誕生日も。」
「ですね〜ちゃんチャミ終了でショックだったんですが今日で大分持ち直した気がします。」
「テンションおかしかったですね。」
「プレゼントくじの当選者を頼まれもしないのに探しまくって、先を越されたら本気で悔しがってましたもんね」
「三好ちゃんが『石川さんつかえませんね〜』とか『石川さん静かにしてください』だって、ぐはははは。コレが聞きたかった。」
「司会の方からマキが入ってましたね。」
「後藤真希誕生日だけに」
「わはははは、くだらねー」
「なははははは」
それなりに話を繋げてみると彼らは新木場でやったイベントの帰りでここ月島に立ち寄ったようだ。口では駄目だといいながら何か楽しそうだ。
「でも美勇伝が斉藤由貴さんの『白い炎』を歌い始めた時は何か懐かしいなぁって、スケバン刑事の主題歌かどうかは忘れてたんですがね。」
「コンドルさん覚えてた?」
「ベストテンとか見てましたからね。ソフィオさんは?」
「スケバン刑事は見たことが無いんですよ。」
「そうか、2代目はね鉄仮面を被らされててヨーヨーでパカッと割れるんですよ。パカッと。知ってる?」
「司馬さんまだ生まれてませんから〜」
「あ〜そっか…うへぇ」
背の高い男の人はコンドルさんと呼ばれている。他の人も外人みたいな名前で呼ばれてる。そうか、これがオフラインでの交流会というものか。4人はその後もハロプロの話について楽しそうに語っている。コンドルさんとか言う人は話を ℃-ute の方に振ろうとするので僕もワクワクしたのだがすぐ引き戻されるので中々聞けずそのたびに落胆した。ヤキモキしたのだが、えりかさんが歌った「オンナ、悲しい、オトナ」という曲があるらしい。名曲だが物凄く難しいそうだ、なんだか聞いてみたい。
聞き耳立ててるのに夢中になっててボケてるように見えたらしい。気がつくと父さんがニヤニヤしながら「お〜い、大丈夫か?」と目の前で手のひらをひらひらさせてた。
「ここで聞くことでもないが何か悩みでもあるのか?例えば恋煩いか?」
「は?」
「この前メグミちゃんと公園で何か話し込んでたもんなぁ。うむ、お前も隅に置けないなぁ。草津の湯でも治せん。」
悪趣味だなぁ…しかし、頭の中で今度は隣のテーブルからあの時の公園にフラッシュバックする。
(続く)
注、このドラマ?はフィクションです。 実際の人物、団体は一切関係ありませんm(_)m。