Extra Flight - 作る人編 2

℃-ute 新曲 PV について

で。作る人を語る上で PV を抜いちゃご先祖様に申し訳ないということで、先日解禁となりました ℃-ute の新曲「SHOCK!」の PV 感想をば。
初めて見た印象としては思ったほど悪くないけど、なんかすごく違和感のある映像だな、と。何かありえないものを感じたのは確かなんだけど最初は何が違うのかよく分かりませんでした。
強烈な違和感の正体が分かったのは何日か放置した後のことで、それに気づいた時は思わず「ユーレカ!」と叫びそうになりました。アルキメデスもびっくりだ。ウソです。
結論を言ってしまえばこの PV って歌の歌詞世界を全くといっていいほど反映していないんですね。


たとえばこの映像。

普段なら背景から浮きまくった立ち姿にセンスねーと野次の一つでも飛ばしそうな映像ですが、この背後で


“涙が今夜も止まらない♪”


という歌詞が流れていたのは愕然としたな。これのどこが涙が止まらないほどの悲哀が出てんの?
これならどうだ。映像からどんな歌詞か想像できるでしょうか? 正解は

“震えが止まらない♪”


俺の震えが止まらんわ。


何か高尾山に登ったつもりが、八甲田山に迷い込んでいた様な感じといえばよろしいのでしょうか。映像美はともかく歌詞世界を全く反映していないということに関しては ℃-ute 史上最低の出来だと思います。これを褒めるくらいなら Bye Bye Bye! の PV を褒める方がまだまし。打ち合わせで絵コンテ切ったバカの額に「肉」と書いてやりたいです。バーカバーカ。
確かに歌詞はひどいです。女子校生に「ああそうだわ 良い男は まだまだ居るから 綺麗になってやるわ 後悔しなさい」と歌わせるおっさんの神経が全く理解できませんし、理解したくもない。だからといって映像もそれにお付き合いしなくてもいいじゃないかと。
楽曲にはメロディがあって、歌詞があって、ボーカルがあって、それらが織り成す音声で一つの世界が完結します。そこに映像を付け足すと、映像が持つ視覚的な力によって歌の世界を立体化してくれるはずなんですね。こちらの購買意欲をプロモート(促進)すると同時に楽曲の世界をプロモートする(発展させる)。だからプロモーションビデオというんだと思います。
つまり PV というのは楽曲世界に従属する存在であって、どんなに酷くてもそこから逸脱する存在であってはならないんだと思う。そう考えると今回の PV は個人的には PV と呼んではいけない存在ではないかと思っています。

思うに PV と考えるからいけないんでしょうね。℃-ute のイメージビデオ(IV)と考えれば良いのかも。そう考えるとほぼ8割がダンスシーンでできていることも納得がいきますし、アップショットのレイアウトも好感が持てます。カメラ目線に終始しないのも良い。

さっきは曲ありきで映像をあてはめるのが PV だと書きましたけど、IV だとビジュアルが主で曲については BGM 扱いで主客逆転します。ハロプロはアイドルですから彼女たちのビジュアルを前面に押し出すのは全く悪いことじゃない。ただ PV 観ながらあーだこーだ考えてきたものにとってはそういう結論に達してしまったのはかなり淋しい出来事ではありました。